新宿に住むこと

できれば来世はふじこちゃん

呼吸するかのように嘘を吐く


たぶん水商売という生業が
この世に存在してからというもの
それを生業とし生きる男女たち、
時にはそのどちらでも無い何人もが
つぶやいたりそっと心に思ったことだろう。

しかしまさか、まさかわたし自身が、
その言葉にたどり着いてしまう日が来るなんて。
正直思ってもみなかったわけで。
ただ今になって思えば
水を得た魚モードになった時のわたしは
予想以上、否、少なくとも平均値より
多少良い成果を出したり成長ができる性格だった。
それよりもなにより、
この齢になるまでキャバ嬢もとい
ホステスを続けるとも思ってもみなかった。
そして気付けばもう、
恐れ多くもありがたくも
立派にお姉さんと呼ばれる数が増えていた。


それは喜ばしいことだし、
本当に数々のお客様のおかげである。

だけど、いつからかわたしは人間らしさを
どこか、少し、失ってしまったんだと思う。


もちろんわたしが吐く嘘で
悪意のあるもの、やましいものなんて
たかが知れているとは思う。
あ、たまになんちゃって嫌味はこぼすけど( ^q^ )

性格上、あとこの生業を続ける上で
自分の中でのルールとして極力正直であることを
自分と約束したのだ。
それでも。
わたしは張り付けた笑顔のまま、
イケメンでも優しくもお金もないお客様を
なんとはなしに褒めたのだ。
でももう忘れた。
なんて褒めたか忘れた。
いつかの深呼吸かため息、もしくはお酒に溶けた。


呼吸するくらいのペースで嘘つくんでしょって
お金も手も掛かる女が大好きなお客様に
いつだったか言われた。
その毛のある類のお客様には必ず言われた。
違うよ、ってその度に笑ったけど
現実になってしまった。

てゆーかわたし思うんです。

ホステスだってみんながみんな、
最初から悪女だったわけでは決してない(たぶん)。
どちらかと言えば育成ゲームみたいなもので
育成するのがお客様なのか、本人なのか、周りか
はたまたその何れもか。
なのではないかと。思うんですね。


少なくともわたしはそう。
だから、
『嘘つき』も『うさんくさい』も今では褒め言葉

たくさんのあの日に、
嘘つきでお金が掛かってわがままって魔法を
何度も掛けられて仕上がったわたしは。
また明日からもうさんくさい笑顔を貼り付けて
呼吸するかのように嘘を吐く。
みんなが欲しがるわたしとして。
もっともっと嘘つきでお金が掛かってわがままな、
愛されるわたしを提供する。


だけど、感謝だけは忘れずに。

少し、人間らしさは失ってしまったぽいけど
きっとこれだけあれば大丈夫かなって思うんです。